書評-竹内政明「名文どろぼう」-どろぼうする技術すらも売り物になる

名文どろぼう (文春新書)


こいつは、なんてぃどろぼうさんでぃ!
まるで、かの有名な石川五右衛門みてぇじゃねえかい。




「名文どろぼう」という表題と「上手に名文を引用する技術」と書かれているから、よし名文を拝借してやろう、なんていうドロボウ根性で読み始めるかも知れないが、そういった企みの大抵はがっかりする結果で終わるだろう。そのハンザイはあまりに鮮やかな【手際】であり、目ばかり奪われ、何も盗み出せない自分を見つける事になる。


「本物」のどろぼうとは、盗んだモノの価値では決まらない。価値の高いと思われているものだって、「有名 名言」とググれば、三秒も経たずにそれっぽい情報にたどり着ける。しかしそれだけでは、ただの名言。そんなものは1億円を無人島で拾ったのと同じだ。人の目に触れて始めて価値を持つ。



そう、どろぼうこと竹内政明のスゴさとは、【手際】の鮮やかさに他ならない。名文を探す、体力と嗅覚。そして、名文と名文を繋ぐ技術があって初めてどろぼうになれるのだ。作者は朝日新聞きってのコラムニストとの事だが、場所が彼を産んだのか、彼自身の力なのか。どちらにしろ彼は立派などろぼうであり、惜しげもない【手際】のばら撒きっぷりは、石川五右衛門のようある。


という事で、晴れてどろぼうになれなかった僕は、竹内政明に頂いた名言を少しだけ、こっそりお借りだけさせて頂こう。あくまで解説があっての名文なので、これだけ取り出してしまうと、面白さは半減以上するのは必至だがしかたない。解説を切り貼りして挟むとか無粋な真似は出来ない。それをするのなら本書一冊分の文章が必要になる。
最後に表題を「名文どろぼう」とした氏の真摯さに乾杯をして、本エントリを終了とさせて頂こう。チンチン。





「かさ」
(お店やさんごっこをしていて)
これ(かさ)は
あめのおとが
よくきこえる きかいです。
〜大阪日向子 宮城・五歳




「良いお酒ですな」とヒトに感心されるようなのみかたが、あんがい静かな絶望の表現だったりする。
高橋和




ネクタイを上手に締める猿を飼う。
〜森中恵実子




<正しい変換>うまくいかない画像サイズになってしまった。
<変換のミス>馬食い家内が象サイズになってしまった。
日本漢字能力検定